日記

ポルノグラフィティとジャンプとアドベンチャーゲームとお笑いで生きています。ツイッターに書きづらいことを書く予定です。

ポルノグラフィティ『暁』感想

ポルノグラフィティ12作目のオリジナルアルバム『暁』の感想を書いていきます。

 

曲ごとの感想に入る前に、今回のアルバムのポイントに触れます。

まずは昭仁がとても良い状態であるというところ。各インタビューで語っていますが、「ファンに向けて作ればいいのではないか」という心境に至ったとのこと。ファンに向けて作ったって言うのをファンの僕が「良い状態」って評するのは偉そうな気もしますが、ポルノに対する外・音楽シーンからの評価やコンプレックス、シーンに向けたことを意識した曲作りとか、そういう類の事を取っ払って、「とにかく良い曲が作ればそれでいい」「歌を自然体で歌えた」ということで、そのマインドや状態がとてもよく出ているなと思います。

次に、これはまぁ前回の記事でも触れましたが、全曲の歌詞を晴一が担当しているということ。ポルノの強みである晴一の歌詞が前面に出ています。

そして、収録曲はシングル以外は全てストック曲ではなく、ここ最近作られた、つまりは今のモードのポルノであることですね。

 

1.暁

作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁tasuku 編曲:tasuku

どっしりした曲かと予想していましたが、マイナー調でアップテンポで少し暗めの世界観で、という個人的にはこれぞポルノの王道という曲でした。力強くてめちゃくちゃかっこいい。「THE DAY」以降、また新しく確立したポルノの軸の系統の曲かなと。スカして外したりせずいつまでも真正面からかっこいいをやってくれるポルノが最高です。

しかしまたまた昭仁どえらい難しいのを自分で(共作ですが)よく作ったな……と。サビが超高くてファルセットも多用して、かと思えばAメロは超低い……!岡野昭仁にしか歌えませんねこれは。ファルセット苦手なんてもう言わないで自信持ってください昭仁さん。

歌詞は、「テーマソング」がコロナ禍における希望を多少無理にでも明るめに書いた応援歌とするなら、こちらは夜明け、希望を感じさせつつも、それでも結局いつもの「自分のことは自分でやれ」なのかなと。

カフェイレで頑張って歌詞で韻を踏んだと言ってたのはこれでしたね。まじで最近の時流に乗って本格的にラップやり始めたらどうしようかと思ってましたが、こういうのなら大歓迎です。

 

プロモーションだとか、ポピュラリティーみたいなことを意識した途端にシングル曲やリード曲がドポップなものになって、そのたびに「ポルノグラフィティらしさ」とは何かということに考えを巡らせ歯痒い思いを抱くということを何度もしてきたので、今回はようやく「それだよそれ!」と思えました。嬉しいです。Mステでこれとメリッサやってファン以外にも大好評なのだから大正解ですよほんとに。

昭仁と晴一自身がこういう曲を「強み」として認識していることは以前から何度も色々な場で語ってきているので分かっていたのですが、どうにも肝心なところで外すことも多かったからなぁ。

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MVも全体的にかっこいい仕上がりになっているので、これくらいならば謎ダンスも許容範囲内と言え……、いややっぱダンスいらないな……。

 

2.カメレオン・レンズ

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「暁」からの「カメレオン・レンズ」なのでシリアスな雰囲気が続きますね。

これが出てからもう4年半ですよ。時間の経つのの早いこと。これと「テーマソング」が続いていることで、作詞の振り幅が示せているかなと。もしポルノや晴一をよくしらずにこのアルバムを聴く人がいても、この歌詞を書いている人が「テーマソング」も書いているのだと分かれば、闇雲に希望を歌う人ではないと理解してくれるでしょう。

 

3.テーマソング

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とはいえこれだって晴一節なのでストレートではあるもののハイパー単純な応援歌という訳でもないですが。爽やかな曲調と、晴一らしからぬ空の青さと白いスニーカーという情景描写に「フレーフレー」という単語選びが目立ちますが、無根拠に明日は良い日だと言い切っているわけではありませんからね。なんとか自分と自分みたいな人を鼓舞して踏み出すところを描いた応援歌なので、パッと聴きの印象よりは地に足が着いていると思います。

 

「テーマソング」は「続・ポルノグラフィティ」がなければアルバムの1曲目かラストに置かれて、ツアーの核として扱われる曲になったんでしょうが、それはもうやったので、今回は『暁』において、この曲に特別な立ち位置を与えないために3曲目というほどほどなところに置かれたのかなと。予想記事でも書きましたけど、今回は声出しがオッケーにならない限りはツアーではやらないのではないかな。いつか声が出せるようになった時に、満を持してロマンスポルノの場でやれるまでとっておいてほしい。

 

どうしても「REUNION」がそのままシングル曲になってここに収まってたら尚最強の布陣になっていたのにな~とも思っちゃうんですけど、もしそうなった場合バランスとって他のアルバム曲も変わってきただろうから、ifは考えないことにします。

 

4.悪霊少女

作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一 編曲:江口亮 Strings Arrangement:江口亮、友野美里

どんな曲かと思ったら「ジャンル:ポルノグラフィティ」のみんな好きなやつ(主語がでかい)でした。「ミステーロ」と同ポジション。

男の僕でもちょっとドキッとするような昭仁の低音から始まり、急展開のBメロ、ポルノでは今までなかったけどどこか聴き馴染みもあるようなキャッチーなサビに極めつけのファルセットのロングトーン……!「身を焼かれる↑」も「逃れられない↑」も気持ち良すぎる。

Twitterでメロディーにもボカロ感があるとよく言われてますが、個人的にはそれほど感じませんでしたし、タイトルに引っ張られているだけでは?と思ったんですけど、08~11年くらいのボカロしか知らない僕にボカロ感を語る資格はないですね。聴いてる人があると感じたのならあるのかもしれない。

歌詞はまさか恋を知った少女のことを歌った曲だとはタイトル時点では全く予想できなかった。世界観が完成されているので違和感なく聴けますが、ちゃんと見るとサビとそれ以外の歌詞に飛躍があるというか余白があるのも特徴かな。ただ、なんとなく感じたものがそのまま正解になっているような気もします。

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MVは可愛らしい絵柄のアニメーション。1番の時点で「お、この感じでちゃんとストーリーも展開していくなら割と良い感じのMVなんじゃないか?」と思って見ていたら2番以降はほぼ同じ素材の映像を左右反転したりしなかったりして繰り返すだけでずっこけてしまいました。ストーリーもクソもない。手抜きかって思っちゃうだろこれは。予算の問題か納期の問題か知りませんが……。まぁ、毒にも薬にもならないので、マイナスではないだけ良いかな。相乗効果でプラスになってほしいですけど。それこそ個人でMVも作ってるボカロPとかに依頼した方が良いものが出来上がってきそうなものだな……。日本人で20代30代でポルノと仕事出来るってなったら喜んで気合入れてやってくれる人多いよ絶対。

 

5.Zombies are standing out

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悪霊からのゾンビで濃いですね。みんな大好き(主語がでかい)ゾンビです。

ライブでやり続けてほしい。

 

6.ナンバー

作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:トオミヨウ

「続・ポルノグラフィティ」の(仮)からブラッシュアップされ、サビの歌詞が大幅に変わりました。元の歌詞から位置が変わった部分もあり、全く新規のフレーズもあり。

何言ってるか分かんなくて「メビウス」よりよっぽどこわかったんですけど、今回のブラッシュアップにより多少分かりやすくなったのかな……?というところ。晴一曰く「曲に合わせたサイケな歌詞」だそうですが。

分かりませんけど、「You were mine」を起点に、それでもよくわかんねぇところを適度に無視して読み解くとすると、ラスサビまでの主人公は、「君」と別れて、未練があるとかではなさそうだけど、なんかおかしくなっちゃって進みも戻りもせず現実を受け入れられずその場にふわっふわと留まり続けているとかそんな感じかなぁと思いました。

音ハメの都合かもしれませんけど、例えば「You were my girlfriend」とかじゃなくて「mine」ってのもなかなかですよね。ネイティブだとよくある言い回しなのかもしれませんけど、普通(普通とは?)の関係ではなかったのか……?と深読みできそうだけど深追いしても分からんので他の人に任せます。

そんで、逆接から始まるラスサビ。逆接は大事なので見つけたら両矢印を書き込みましょう。何か想像を交えて解釈するというよりは歌詞をそのまま素直に受け取ってみると、地面の中で栄養を蓄えた花や冬眠を終えた熊のように、活動するに足る状態(満ちる)になったものは動き出すものだし、逆に、冬に備えて食糧を確保するために動き出す蟻と鳥のように、体力が減ったり、動かないと死んでいく状況(欠ける)になってもやっぱり動き出さないといけない。

めっちゃライトにざっくり言ったら「いろいろあるけどどうしたって人生は続くんだから切り替えて次行こうぜ」くらいでいいのかもしれない……?

歌はなんだかねっとり……じゃないな、なんだかちょっとべたっと歌っていて、これも新しい昭仁の表情という感じですね。

 

7.バトロワ・ゲームズ

作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁、トオミヨウ 編曲:トオミヨウ

予想通りというか、良くも悪くもマジでそのまんまバトロワFPSゲームのことを歌った歌詞でした。ヘッドセットしてるんでVRでフルダイブっぽいですけど、基本流行りのゲーム達そのまんま!!!

僕は普段やるジャンルではないにせよ十分知識はあるので「そのまんまだな」って感じですけど、本当に知らない人からすると世界観込みで新鮮に聴けるのかも。

えらいのは、僕は晴一はロックスターであっておっさんとは思ってないですけど、一歩間違えると「おっさんが無理して若者人気のゲームの歌詞書いてズレた」ものになる可能性もあったんですけど、そうはなっていないところです。そのまんまなんでズレてないです。ただ、ただ、「常にヘッショを狙われて こっちもヘッショを狙ってる」の1行は、なんかもうちょっとどうにか。「ヘッショ」という表記とわざわざ2回言ってるのがちょっとダサい……!

もうひとつえらいのは、歌詞を成立させるうえで、安易にゲーム批判のオチにしてないところですかね。1番サビのラストで「血走った赤い目が見ている世界戦はどっち」とは歌ってますけど、まぁ、別に皮肉ったり警鐘を鳴らしたりするわけではなく、ただただ中毒になるくらいのめり込んでいるプレイヤーを歌っていると思ってよさそうだし。

「〇〇じゃなくて良かった」という、なんだか後ろ向きな褒め方になってしまいましたが、歌詞がとにかくそのままなので「トオミヨウやりたい放題」とでも言ってしまいたくなるような曲をそのまま楽しめるのがとても良いところですね。「MICROWAVE」以上にお洒落に振っている。ジャンルはテクノなのかハウスなのかエレクトロなのかシティなのか、正確な知識がないので分かんないのが恥ずかしいんですけど、この曲とアレンジめっちゃ好きだな~。曲のテーマやサウンドに合わせたからなのか、長さが3分に満たないのはなんだか現代的ですね。

「暁」共作のtasukuさんといい、これのトオミヨウさんといい、ポルノとの付き合いが長くなって十二分な信頼関係があるからか「昭仁ならもっといけるだろう」とか「ここまでやってもポルノの枠からはみ出ることにはならないだろう」とかしっかり分かって投げているんじゃないかと。『PANORAMA PORNO』から10年ですからねぇ。

歌唱は歌詞に合わせて全体的に無機質な印象を受けますが、最後の「バトロワ・ゲームズ」の「バ」の高音の力強さはシビれますね。

 

8.メビウス

作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasuku

「ナンバー」を正当なブラッシュアップとするなら、これは別バージョンという感じですね。様変わりしたな……!

シンプルなアレンジで昭仁の歌の力強さが際立つロックバラードだったのが、サビにかけてダンサブル、というと言いすぎか、なんだかちょっとノレちゃうような、まぁまぁ軽やかなアレンジになりました。最初にライブで聴いちゃったんでどうしてもアレンジは(仮)の方が好きかな~というところですが、その内こっちもしっくり来るでしょう。

歌詞もアレンジに合わせて何か所か変わりました。「Wasted Love」が「わかってんだ」、「えいえんとは かくなるもの」が「えいえんとはこういうこと?」が大きな変更点で、あとは2番のAメロの言い回しも。全体的に主人公像が分かりやすくなりましたね。特に「かくなるもの」は他の部分に比べてこれだけ語彙レベルが明らかに高くて歌詞から受ける主人公像と嚙み合わなかったので(その分余計不穏でゾクッとしたところもあったりしますが)ここは素直に良い変更かなと。まぁ主人公像は掴みやすくなったものの実年齢はいまいち分かりませんが……。

サビ・大サビの歌い方は変更前と同じく力強いんだけど、「わかってんだ」にせよ「こういうこと?」にせよ、変更前とは違って、感情を思い切り発露させてそのまま言い捨てる、というと少し正確でないかもしれませんが、爆発させてる感じ。繊細なAメロとかなりギャップがある。新たな主人公像に沿った歌い方とすると、子供なのかなぁ。

 

9.You are my Queen

作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一 編曲:tasuku

インタビューで語っている通り、箸休めですね。童話・童謡のようなアプローチの優しい曲。いつもの箸休めの感じで現代のあったかい若者のどうでもいい恋愛の曲だったら「特に好きじゃない曲だな」で終わっちゃうんですけど、これはわりと嫌いじゃないですね。アレンジの妙か、イントロでレコードに針を落とす音が入っているおかげで、それだけで、少なくとも現代ではない云十年前の世界か、ファンタジーベースの世界観の話なのかなと受け取ることが出来たのが大きいです。Cメロで「象のパレード」ってのも出てくることもあり、僕はファンタジー世界の小学生くらいの年齢の男の子と女の子の話だと受け止めました。(だから、晴一自身だとか、親が娘に向けて、とかって解釈には驚きました。その発想は僕の中にはなかった)

「永遠にあなたに仕えましょう」って子供同士のやり取りとするなら「あら可愛い」程度で受け取ってしまってよさそうですけど、永遠にってめっちゃ重いので、そういう解釈をしようと思えばいくらでも出来そうですよね。「メビウス」の後なのもあって、不穏な気配を感じ取っていくとこまでいってメリバとか……。いやこれはなんだか直接喋ったわけではないのに同じコマに映ったからこのカップリングは公式!とか言い出す厄介なオタクみたいで無理があるな……。

ついでに言うと、なんかTwitterではよく「この曲とあの曲は主人公一緒なのでは?」とか「これはあの曲の別視点だろう」とか見かけるんですけど、ポルノって特に明言がない限りは曲を跨いで同じ世界ってことはないと思うんですよね~。そう思いたいだけじゃねぇのって。「メビウス」と「ナンバー」が偶然同時に新曲として発表されて、偶然両方「赤い目」があったからって、ねぇ……?あまりに短絡的じゃない……?

 

10.フラワー

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「こんな夜更けにバナナかよ」の主題歌だったこともあり、ポルノというか、晴一にしては珍しく限りなくノンフィクションに寄ってる歌詞なので、ポルノの中でも相当特殊な立ち位置にいる曲だと思います。それもあって、何とは言わないけれど、昭仁もDISPATCHERS(YouTubeの方)でおそらくは特別な意味を込めて歌いましたからね。

花の生命の力強さという普遍的なテーマに落とし込んでるので、バナナかよの人のためだけの曲じゃなくて、ちゃんとポルノグラフィティの曲になってはいるんですが。

アルバムを通しで聴くとどうしてもちょっと浮いてる感じがあるかな。今後のライブでは出しどころがなかなか難しそう。

 

11.ブレス

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この曲はもう歌詞も曲もとても良い大名曲なので、今更アルバムで何か言うこともないかな。頼むからツアーでやってほしい。

ポケモンでポルノを知った子供たちが興味を持ち続けてこのアルバムを手に取ってくれることを期待するにはリリースから期間が空きすぎちゃった気もしますが、そんな子たちがいたら1曲目の「暁」でぶったまげてほしいな……。

 

12.クラウド

作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一 編曲:宗本康兵

クラウドサービスに残っている別れた恋人との写真やもろもろの思い出を回顧する曲ですね。曲も歌い方もポップかつノスタルジック。音域がめっちゃ広いんですけど、それを全く感じさせない昭仁が凄いです。康兵さんのアレンジも綺麗ですね。そういう映画の主題歌のよう。

まぁ多くの人が経験する恋愛と別れを歌っていて、多くの人に心当たりのある事物が鏤められているので、多くの人にヒットしていそうな気配がありますね。これは自分のブログなので自分の話をしますが(今までもしているしこれからもしますが)、僕は割と切り替え早くさくっと写真消せるし思い出して泣くようなタイプではないので、この曲がこう、率直に言うと、あんまり刺さらない……!自分というよりは写真を消せないタイプで結構引きずっちゃう友達を当てはめて聴く感じ。刺さる人は深く深く刺さって抜けず、聴く度泣ける曲なのだろうな~。

歌詞も晴一にしてはなんだかひっかかりがそれほどない気がして。これはでも、昭仁が今回の一連のインタビューのどっかで「いつもだったら直接的な歌詞は僕が書くから晴一はそこを避けるけど、今回は全曲の歌詞を晴一が書いている分、晴一がそういうアプローチをしているところもあるかもしれない。それが晴一の新しい部分を引き出しているかも」みたいなこと言ってたんで、この曲がそういう感じなのかなぁ?と。

ヒトリノ夜」の「ケータイ」に始まり、「グーグル検索」「インスタグラム」と時代感のあるワードを入れてその時々のリアルさを切り取る系譜に連なる部分もある気もするけど、「クラウド」はもう随分生活に根差しているのでそれほど現代特有のワードって感じもしないんだよな。いやそれを言ったら「グーグル検索」も当時の時点で普及していたけど。

 

カフェが閉店した件でなんだか「花束みたいな恋をした」を思い出してしまって。最近(と言っても半年前くらいに)見たからなんですけども。僕にとってこれはたいへん気色の悪い映画だったので、まずこの曲と花束を切り離すことをしなければなりません。なんで見たかってダウ90000のネタの理解度を深めるために見たんですよ。

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見てなくても凄く面白いけどちゃんと理解するために「花束」と「愛がなんだ」を見ました。12分のために4時間をかける価値はあった。

 

ツアーに向けてこの曲と向き合っていこうと思うんですけど、まぁ恋愛じゃなければ、学生時代何度も行ったお気に入りの居酒屋がコロナ禍で潰れて切なくなったりとかはあるので、そういうのでも良いんじゃないですかね。良いですかね?

 

13.ジルダ

作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasuku

とりあえずの印象は「星球2022」といいますか、洒落た大人の余裕のある曲。ファンタジー世界の完全フィクション系かと思いきや、バルでの出会いから始まるであろう恋愛を描いた曲でした。

主人公はやれやれ軽薄モテ男といった趣で村上春樹にでも出てきそうな。いやろくに読んだことないんで完全にイメージですけど。きっと顔も良いですよこいつ。

デートでオペラ行ってお互いにオペラジョークをかますことを想定しているあたり、やっぱり気取ってていけすかないやつです。この男のお眼鏡に適うお相手の女性もそういうタイプなんじゃないだろうか。2人揃って教養と文化レベルが高くて、それを自覚していて、そんな自分たちが嫌いじゃないっていう。まぁサビがよく見たらただの主人公の予定でまだ行動に移してないので解釈は分かれるところですけども。

そんで「マグリオット」って何なんすかね? 文脈的には「ジルダ」同様オペラ『リゴレット』の登場人物だったら自然なんですけど、ググっても全然それらしいのが出てこない。フランス語で「マ・グリオット」だと「私の吟遊詩人」になるそうで、主人公はポエミーなので、これでも文意は通りますが、はたしてなんなのやら。

基本最後のサビまでずっと予定なので真相は分かりませんが、「君の手帳見せてよ ペンは僕が持ってる」は必殺技で、これで「素敵!抱いて!」ってなって成功してるんじゃなかろうか。

この感想全然悪口じゃないです。これもまた新藤晴一の世界観。フィクションとして受け取る分には楽しい。僕はバルも行かなければ人の手帳を取り上げて予定を虹色にしたりしないんであれなんですけど、地でこれをいく人もきっといるんだろうな~。もしかしたらリトマス試験紙みたいな曲かもしれないっすね。

 

14.証言

作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:江口亮 Strings Arrangement:江口亮、友野美里

ご時世を踏まえた曲と予想していましたが、愛を歌った壮大なロックバラードでした。歌詞を読んで「証言」というタイトルに唸りました。なるほどなぁ……と。

同じ別れでも具体的な「クラウド」と対照的にこちらは抽象的に別れの喪失感を歌った曲となっています。まるっきり同じテーマということでもないので無理に対比させなくてもいいんですけどね。これは例えば恋人や結婚相手との別れかもしれないし、例えば家族との死別かもしれない。

「私」にとっての「あなた」の存在があまりにも大きく、「私」にとってのすべてと言っても過言ではないので、描かれている世界・情景は基本的に「私」の中の世界、心象風景だと思ったんですが、インタビューを読むに、本当にハリケーンが来て木々が薙ぎ倒されている世界のお話っぽい?悪魔はいないにしても。

てらいなく「愛」を書いたという晴一の言葉通り、リアリストでありつつロマンチストでもある晴一のロマンチストの面が出ています。

完璧なものなど この世にはないと言うのなら あの愛はそれを

覆した ほんの一瞬 たくさんの星が証言してくれるはず

歌詞は基本的に暗い世界観ですが、このようにサビで「私」が愛の力を信じて、「あなた」と過ごした時間を肯定的に捉えているので暗い曲という感じではありません。「あなたのそばでは 永遠を確かに感じたから」や「一秒と千年の間に違いはなくて」のように、これも一瞬の永遠性の話ですよね。

曲とともに盛り上がっていく演奏や大サビのドラマチックさからはミュージカルのような印象を受けます。英詞部分は倒置している上に「Can you see」を3回も繰り返しているので、とにかく凄く強調している。「私」の感情が最も高まっていると解釈するとこれは「私」のセリフで、「you」は「あなた」のことを言っていることになりますが、急に英語になっているので、視点人物がここだけ変わって、ストーリーテラーが俯瞰で語っているのでは?と解釈すると、「you」は「私」。結局洞窟の暗闇の中の光でも思い浮かぶのは「あなた」みたいな感じで読めばよさそうですけど……。

なんとなく聴いても曲のメッセージ性や伝えたいことは伝わると思うんですけど、ちゃんと読もうとするとあんまり自信を持って言い切れないですね……。うーん、僕の読解力不足か……。

 

曲・メロディーに関しては「あなたを失って」の部分がポルノにはなかったメロディーという印象があり、それも相まって、うたコンでのこの部分の歌い方がちょっと歌謡曲っぽさが強く聴こえてしまって、最初はあんまりピンと来ませんでした。CD音源だとそこそんな気にならなかったので、ライブでの歌い方がどうなるかって感じですかね。

1曲だけポンと聴くより、アルバムを通して聴いた方が沁みるかなというところ。大分印象が違いました。ツアーでもこれが本編ラストの可能性結構高いんじゃないだろうか。

 

MVはノイズなので埋め込みません。俺の感受性ではあれは分からん。

あとこれも言わなくていいことですけど、こういう歌詞が出てきたからっていちいちプライベートに結びつけたがる人は新藤晴一の歌詞向いてないと思いますね。フィクションやぞ。

 

15.VS

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「神 vs 神」のことを抜きにしても、この曲は聴き終わった時の満足感がすごい。アルバムの締めとして相応しいなと改めて思います。名曲です。

セトリのどの辺に入ってくるのか予想しづらいけど、聴きたいんでセトリには入っていてほしい。

 

【総評】

これはひょっとして、史上最高傑作ではないか?と思いました。個人的な好みに引っかからない曲もあるにはあるにせよ、完成度の高さは相当のものじゃないでしょうか。

『PANORAMA PORNO』で色んなジャンルに蒔いた種が、10年経って、『暁』で完全に花が咲いたという感じ。ここに来てあの時のチャレンジが結実した。

あのアルバムは当時一回既存のポルノグラフィティのイメージを壊す意識で、体制を一新し、統一感を気にせずとにかく新しいチャレンジをしたものだったので、当時のインタビューで本人も「『PANORAMA PORNO』がどこに繋がるかは現段階では誰にも分からない。ただ、バンドのストーリー上に平場ではない場面を作れた」と語っていたのですが、『暁』に繋がっていたのだなと、ストーリー上で確かに意味がある場面だったんだなと。

ポルノグラフィティがジャンルレスでどんな曲もやるのは昔っからだし、クオリティーで言えば前作『BUTTERFLY EFFECT』もかなり高かったと思うんですけど、あれすら通過点だったんだなぁと思えました。

23年目でこんなアルバム出してくれるんだからポルノグラフィティのファンはやめられません。ずっとファンやってて良かったです。これからもよろしくお願いします。ところでVisual Album暁は都合で見に行ってません。見に行ってないから何も言うまい。いや、でも、ツアーは普通にかっこいいのをお願いします。いやマジで。